画像生成AIの急速な進歩で、誰でも簡単にイラストが描けるようになりました。
そんな中で、著作権に関する問題が浮上してきています。
AIが自動的に生成した画像の著作権は誰のもの?
著作権侵害の可能性はあるの?
商用利用可って何でもOKじゃないの?
じゃ、現在の日本の法律ではどのように取り扱われているのか、わかりやすく解説するね。
この記事でわかること
✅アメリカで訴訟問題になっていること
✅日本の法律ではどうなっているのか
✅著作権侵害となる例
✅商用利用可と著作権
✅まとめと今後の展望
わたしは法律の専門家ではありませんので、内閣府が発表した文書と、テレ東BIZの動画を参考に調べてわかりやすく図解しました。
ただし、2023年7月1日時点の法律を元に解説しています。今後、法律が改訂される可能性がありますので、最新情報を調べてくださることをお願いいたします。
AIアート業界での2つの訴訟
画像生成AIが急速に普及しつつあるアメリカで、写真の販売などを手掛けているゲッティ・イメージズが、イギリスのスタビリティAIを提訴しています。
また同じくアメリカで、AIが作り出した画像に著作権を侵害されたとして、クリエイターによる集団訴訟に発展しています。
現在、集団訴訟の対象となっているAI企業
AIの生成画像で集団訴訟の対象になっているのは、
・Stability AI(ステーブル・ディフュージョン)
・Midjouney(ミッドジャーニー)
・Deviant Art(ドリームアップ/ステーブル・ディフュージョン)
どれも今一番人気の画像生成AIの企業です。
争点となっているお互いの主張
写真販売のゲッティ・イメージズやアーティストが訴える主張は、「AIモデルの学習に、我々の画像が無許可で利用された。類似しているのが問題だ。」とのことです。
では訴えられている側はどう主張しているかというと、「AIの学習目的であり、AIは機械、著作にはならない。」と言っています。
争点となっているのは、AIの学習目的で使っていることがどう判断されるのかという点です。
裁判の行方は、今後の「AIと著作権」を考える指針となる可能性があり、注目されています。
著作権侵害の判断基準
アメリカで争点となっているのは、AIの学習目的なら無断使用してもいいのか、無断でAIの学習に利用して似せるのはそもそも問題なのかです。
ところが、日本の法律の場合はちょっと事情が変わってきます。
まず、AIの開発段階と利用段階は、分けて考える必要があります。
何故かというと、日本ではAIの開発段階と利用段階では、著作権侵害に関する判断基準がそもそも異なるからです。
ここを勘違いしないように注意しましょう。
今後、AIを利用して作った画像でビジネスをしようと考えている方は、これから説明することをよく理解してください。
ちなみに、現在の著作権法は「作風」や「画風」を保護することはありません。
これはAIに限らず、手書きの画家でも同じです。
ある画家が他の画家の影響を受けて、作風やタッチが似てくることはよくあることです。
AIがある画家の作風を真似たとしても、それは著作権の侵害にはなりません。
文化庁ならびに内閣府の見解
ここから、文化庁ならびに内閣府の著作権に関わる見解を解説します。
AIの学習・開発の段階に適用される法律
AIの学習・開発段階では、基本的に著作権を持つ人に許可なく著作物を利用して学習させてもいいという規定になっています。
2018年に成立した改正著作権法、30条の4
「AIが文章や画像を学習する際、営利・非営利を問わず著作物を使用できる」
と定めています。
ただし、「著作権者の利益を不当に害する場合は、使用できない」という条件付きです。
必要と認められる範囲内であればOKということです。
では、どこまでが必要と認められる範囲内なのか、その判断はあいまいです。
たとえば、違法にアップロードされたものから学習させると、著作権者の利益を不当に害すると判断される可能性があります。
けれども、今の著作権法は「作風」や「画風」を保護する役目は持ってません。
AIを開発する段階では、アーティストからすると「これって、著作権侵害じゃないの?」と思われるような画像でも許されてしまうことがあります。
これは、繰り返しますがAIアプリやAIツールなどを開発している企業や個人が関係している第30条の4です。
AI利用者には、第30条の4は適用にならないので注意してください。
AIから生成・利用する段階での法的責任
AIを利用して画像を作る、生成する段階では、著作権侵害の基準は厳しくなります。
AIが作った画像を商用利用する場合、著作権によって保護されている画像と、AIが生成した画像が酷似している場合、著作権侵害と判断されます。
著作権侵害とは
どのようなケースが著作権侵害になってしまうのでしょうか。
著作権侵害には「類似性」と「依拠性」の2つの要素が同時に感じ取れるものが該当します。
類似性
「本質的な特徴が作品から感じとれる」
この場合に類似性があると言われます。
本質的な特徴とか難しい言葉だけど、単純に似ていることです。
依拠性
新しい作品が、既存の作品を元に作られた場合に依拠性があると言われます。
要するに元ネタがあるということです。
「たまたま似てしまったもの」偶然に似てしまったものは、著作権侵害にはなりません。
著作権侵害があっても、損害賠償請求できるかというのはまた別問題で、それをするためには、利用者に「故意または過失」がなければいけません。
故意・・・これはわざと、悪いことだと知っていて
過失・・・・あらかじめ予見できたのに避けなかったこと。
「この画像使ったら、もしかして問題になるかな。でも、わかんないから使っちゃえ!」
「この画像はマズいじゃないか?」というのが頭の中を横切ったのに、避けなかった、止めなかった。
文化庁によると、著作権に関して疑問を持った既存著作物の権利者が、どのような対応を取ったらいいのかを解説しています。
自身の著作物と類似したAI生成物が利用されている、AI生成物は自身の著作物に依拠したと思われるなどの場合、著作権侵害として、利用行為の差止請求・損害賠償請求といった民事上の請求や刑事処分を求めることができる。
文化庁「AIと著作権」講演資料より
著作権侵害となる例
【Midjouneyで生成】
ープロンプトー
有名なアニメの作品名、登場人物の名前 in the lavender fields, –style raw、
【Leonardo.Aiで生成】
ープロンプトー
有名なアニメの作品名、登場人物の名前 in the lavender fields,
【Leonardo.Aiで生成】
ープロンプトー
realistic light, pretty girl, cute face, bright face, smooth skin, portrait painting, blushing cheeks, Simple Micro dress, top model, hyperdetailed painting, proportioned body, detailed, portrait composition, look at camera, blurred, 16k, …………………………………
これに、有名なアニメの〇ー〇ルの絵をImage to Imageさせました。
何をするとダメなのか
プロンプトに特定の作品名、キャラクター名をあげています。これが問題ですね。
IImage to Imageでは、著作権のある画像を使うのはアウトです。
これによって、依拠性があると判断されます。
見た目も人気のキャラクターにとてもよく似ていて類似性があります。
上記3つの画像は、類似性と依拠性が同時に2つあることで、著作権侵害となる可能性が高いです。
よって、アウトです。
著作権侵害とならない例
【Midjouneyで生成】
ープロンプトー
ラベンダー畑にいる美しい女の子、髪は薄いピンク、セーラー服着ている –niji 5 –style expressive –s 400
プロンプトの –niji 5 はアニメ風にする指示です。
女の子の様子には特定のモデルキャラクターはなく、描写を指示しているだけです。
この絵には、類似性も依拠性も認められません。
よって、セーフです。
これは意図ぜず偶然にできてしまった画像です。
ープロンプトー
Photo of a beautiful Japanese woman, wearing glasses, white dress, 26 years old, short hair, Canon EOS
なんとなく日本の有名な女優さんに似ています。AIがある女優さんの写真を日本人女性として学習したと思われます。
このように、「たまたま似てしまったもの」は著作権侵害にはなりません。
何故かというと、類似性はあっても依拠性がないからです。
それでも、似ていると使うのはためらいますよね。
商用利用可と著作権
商用利用可という言葉は、何でもOKと勘違いする可能性があります。
商用利用については、画像生成AIサービスの利用規約にのって利用しましょう。
多くのAIサービスは、「自分に著作権がある画像しか使ってはダメ」となっています。
つまり、自分のイラストに創造性があり著作権があれば商用利用可能ということです。
Image to Image は自分の顔や、自分が描いたイラストなど、自分に著作権があればセーフです。
他の著作権を侵害することなく、オリジナルな作品なら商用利用可能という意味を今一度確認しておきましょう。
AI画像に著作権はあるのか
著作権というのは、著作物を守る法律です。
そもそも著作物とは何かというと、「思想または感情の創作的な表現」と定義されています。
AIには「思想や感情」はないので、現在の法律ではAIで作った画像には著作権はない、ということになります。
一方で、人間が絵を描く道具としてパソコンや画像ソフトなど使ってCGを作る場合は、著作物であり著作権があります。
政府の報告書などでは「著作権が発生するのは、人間による創作的な寄与がある場合」とあります。
つまり、人間の創作的な寄与が行われているかが問題なんですね。
では、人間がAIを道具として使い、創作性のあるプロンプトを入力して描きましたと主張したらどうなるのでしょうか。
現段階では、判例がなく難しい問題です。
まとめ
画像生成AIを利用して、画像生成する際に気を付ける点
① 開発段階で違法に画像を取得しない
② 利用段階において、作られた画像が他の著作物と類似していないか確認する。(Google 画像検索など利用)
③ 利用段階で開発段階の基準を適用しない。
今後、日本でも現時点で「著作権侵害ではない」と判断されているものが、変わってくる可能性があります。
常に最新の著作権の知識を知っておきましょう。
そして、AIサービスは無くなることはありません。今後も進化し続けて新しいAIサービスが生まれるでしょう。
法整備で規制されるでしょうが、AIの進化・発展は止められないと思います。
国際的なガイドラインが必要かもしれません。
最新情報を理解できるようにアンテナをはっておきましょう。