宮沢賢治と言えば、有名な作品が数ある中で、『銀河鉄道の夜』は最高傑作でしょう。米津玄師さんは自身で「宮沢賢治が好き」とおっしゃっていました。それがよく表されているのは、2020年に発表した『カムパネルラ』です。『カムパネルラ』という曲は、宮沢賢治ワールドのキーワードがいっぱいです。
『銀河鉄道の夜』と『カムパネルラ』の関連性
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治の最高傑作
夏休みの宿題で読書感想文の課題によくリストアップされるのが『銀河鉄道の夜』です。この童話は子供が読んでも面白いですが、大人になってから読むと更に面白い作品です。主人公のジョバンニは親友のカムパネルラと一緒に、銀河鉄道に乗って天の川を旅するお話です。単なるファンタジーではないのです。
- 人としての「本当の幸福」って何だろう
- この世を去る人とこの世に残された人
- 法華経の世界観
上記のように大きく3つのテーマが綴られた作品だと思います。これは、宮沢賢治が亡くなる最後の最後まで抱いていた宗教観に基づいているのです。
『カムパネルラ』米津玄師による鎮魂歌
曲のタイトル『カムパネルラ』、これだけで宮沢賢治を好きな人にはピンときます。カムパネルラは『銀河鉄道の夜』の主人公ジョバンニという少年の親友の名前です。ラストでは川に溺れた友を助けるために川に飛び込み、残念ながら命を落としてしまう少年です。
米津玄師さんは「前作のアルバム発表から4年近くも経ってしまい、この4年近くの期間に次のアルバム発表を待っているうちに亡くなってしまった人もいるのではないか?」と自責の念に駆られたとおっしゃっています。
この世を去った「カムパネルラ」に対しての鎮魂歌として、この曲はつくられています。これは、待っていてくれた4年間に亡くなってしまったファンに対しての鎮魂歌でもあるのです。
『カムパネルラ』は誰の目線で書かれたか
最初の歌いだしが♪カムパネルラ♪です。
当然、『銀河鉄道の夜』の主人公ジョバンニの目線で曲を聴いてしまうのですが、聴いているうちに違和感を感じます。
それは、ジョバンニ目線で書かれた曲ではないからです。ジョバンニではないとすると、誰?
米津玄師さんはインタビューでこうおっしゃってます。
「カムパネルラに対して歌っている曲ではあるものの、歌っているのはジョバンニではなく、ザネリをイメージしている」
ザネリとは、『銀河鉄道の夜』ではわき役ですが、非常に大きな意味を持つ登場人物です。
先ほど、カムパネルラは、川に溺れた友を助けるために川に飛び込み、残念ながら命を落としてしまう少年と説明しました。最初に川に溺れていた友、それがザネリです。
命を助けられた少年ザネリ。この世を去ってしまったカムパネルラ。
この構図があって、その痛々しいほど美しい懺悔の思いが、宝石のかけらのように輝いているのです。
宮沢賢治と米津玄師の共通点
米津玄師さんの曲は、死というテーマを恐ろしいものとは描かずに、神聖だけれども、もっと身近にあるものとして描かれた曲が多いように思います。それは、宮沢賢治が書いてきた作品と似通ったものがあるのではないでしょうか。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、
どこまでもどこまでも一緒に行こう。
僕はもうあのさそりのように本当にみんなの幸(さいわい)のためならば
僕のからだなんか百ぺん灼いてもかまわない。」
(『銀河鉄道の夜』より引用)
他人の幸せのためならば命を惜しまないというカムパネルラは、宮沢賢治の信条そのものです。
そして、この世に残されたザネリは、いつになっても癒えない傷を背負い生きていく。それは宮沢賢治が妹トシを亡くした慟哭と似たものがあると感じます。
『カムパネルラ』の曲の最後は、「君を覚えていたい カムパネルラ」です。
傷を背負いながらも生きていくと誓うセリフは、やはり、ジョバンニよりもザネリの方が、しっくりきます。
またザネリは、妹に先立たれても生きていこうとした宮沢賢治の姿でもあるのです。
まとめます。『カムパネルラ』は鎮魂歌です。誰が誰に対する?
ザネリ が カムパネルラに対する。
宮沢賢治 が 妹トシに対する。
米津玄師 が アルバム『STRAY SHEEP』発表までに亡くなったファンに対する。
宮沢賢治の文章と米津玄師の歌詞と、どちらも「美しい」という表現しかできない自分が恥ずかしいです。
米津玄師のMVの中でも、一番美しいのは『カムパネルラ』ですね。
米津玄師さんは、2022年TOUR変身、東京・大阪・神戸・愛知・埼玉をツアーを完走しました。お疲れ様でした。
観たよという人が羨ましいです。カムパネルラをこんな思いで聴いてくれたらうれしいですね。
ファイナルには常田大希さんが、サプライズ・ゲストとして登場したそうです。神回ではないですか!!
次のチャンスがあったら、チケット当選しますようにと、銀河に願いをかけるねこまんまでした。
この記事を書いた人
最後までお読みいただきありがとうございました。
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画像生成AIで描いた「銀河鉄道の夜」を記事にしています。
美しい宮沢賢治の世界をAIアートで楽しめます。
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